No.090 タライにモザイクがかかる時代

タライにモザイクがかかる時代

 BPO(放送倫理・番組向上機構)が、叩いたり蹴ったりする激しいツッコミで笑いを取る番組の良し悪しについて審査をする事となったようです。暴力を想起させるような行動によって笑いを取る事はイジメに繋がりかねないとの事です。もしそれがNGになったら、多くの番組が無くなっていくでしょうね。とんねるずやダウンタウンで育った私としては、「笑ってはいけないシリーズ」とか、とんねるずの落とし穴系のドッキリとかが審査の対象になってしまうと思うと残念な限りです。

 もしも、激しいツッコミがNGになった場合は、どこまでがNGになるのでしょうか?ペコパのボケのすべてを許容するようなツッコミはOKとしても、なまり芸人で有名なカミナリのような、音がバッチリ出るほどの激しいツッコミはNGになるのでしょう。その間にあるような芸人さんは難しい所でしょうね。テレビの場合はスポンサーを気にして、小さなツッコミでもNGになってしまうのではないでしょうか。極度のつっこみ恐怖症を持つ人がテレビを見ていて「あ!今の叩いた!スポンサーに言いつけてやる!」と言い始めたら、テレビ業界も反応せざるを得ないでしょう。50年以上もツッコミツールとして活躍していたハリセンなども販売禁止になるのかもしれません。

 また、イジメを助長するのを止めるという目的でツッコミをNGにするなら、プロレスとかはどうなるのでしょうかね?「プロレスはスポーツだ!」という人もいますが、興行の要素が強いのも事実です。ひ弱なキャラクターが思いっきりマットの上で叩かれているのは、やっぱりイジメを助長するということでNGになるのでしょうか?あるいはかつての学園ドラマの名作「金八先生」などにおいても、イジメのシーンはたくさんあります。それらは
OKだけれども笑いに変換させているのはNGという事なのでしょうか?プロレス技をかけられるイジメられっ子なんてわんさかドラマには出ていますが。。。

 戦時中、ぜいたくは敵だ!芸能は精神を貧困にさせる!などの理由で、多くの演劇の台本にはチェックが入り、娯楽本には黒墨が塗られ、映画などもカットを要求された歴史があります。その時の目的は「日本の勝利」であり、「娯楽もなく戦っている兵士たちのために」だったのでしょう。その時はそれが正義だったのです。でもそれは日本の勝敗には何も影響しませんでした。今回の判断も、結果としてイジメの減少に何にも繋がらないような結論に至らない事だけを願ってやみません。そのうち、ドリフの名作コントを再放送する時も、落ちてくるタライにモザイクをかけたり、いかりや長介さんの悪口を言い放つシーンなどで「ピー!」というモザイク音が入ってしまうかもしれません。それを見た、少年少女たちがインターネット上でモザイクが入っていないものを、こっそり隠れて見るような世の中になったらそれこそお笑いですね。


習慣サポーター けいぞうくん
(掲載日:2021年9月10日)
(次回配信日:2021年9月17日)

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