No.087 くたびれたサラリーマンたちの群れ

くたびれたサラリーマンたちの群れ

 「電車に乗っていても、くたびれたサラリーマンが多くて、自分はあんな風になりたくない…」就職活動中の学生からよく聞くようなセリフです。夜の9時くらいに電車の中で眠りについているオジサンを見た時、学生の眼には、毎朝満員電車に詰め込まれて出社し、まるで機械の一部のようにルーティンワークに追われ、それでも仕事が終わらずに残業に追われて気力もなくなり眠りについている残念なオジサンに見えているのでしょう。あるいは、居酒屋で隣に座ったサラリーマンが会社の愚痴を言って、飲んだくれているシーンを重ねて、電車で酔っぱらって寝ているオジサンは、辛い仕事から現実逃避したくて酒をあおっているのだと想像を巡らせているのでしょう。

 まぁ、社会人になって分かることではあります。仕事というのは辛い事もあるけど楽しい事もある。誰かを喜ばせるため、誰かを守るために働き抜いた先には、大きな充実感を伴う疲労感もある。なので、みんながみんな、会社にこき使われて、自分を見失っているわけではないということを。逆に、学生のようなノリでいつまでもギラギラしている中年がわんさか乗っている車両があったら、それこそ気持ち悪いものです。もしかしたら、アジア旅行などに行って生命力あふれる空気を感じてきた学生などは、その雰囲気と比較しているのかもしれません。でも、それはもはや国民性でしょう。公共の場でおとなしく立ち振る舞うことは、日本人の体に染みついた習性みたいなものでしょう。

 人間って見た目で判断してしまう事って多いですよね。そういうのはテレビなどの視覚情報から作られるものって多いですよね。ドラマの中で、サラリーマン役の人が、上司に叱責されたり、やりたくない仕事や、行きたくない宴席に駆り出された後に、電車でくたびれて寝ているシーンなどを見てきた人にとっては、「電車で寝ている人=仕事に追われている人」と直接結びついていくのでしょう。国のイメージなんかもそうです。イタリア人はナンパ師が多い。これも、LEONの表紙を飾るなど、ちょい悪おやじの代表格であるイタリア人のジローラモさんの存在が大きいと思います。それ以外にもブラジル人ならみんなサンバが踊れる。アメリカ人はみんなヒーローになりたがっている。等々。ニュースやアニメなどから創られた印象なのでしょう。

 そういうパターン化された印象がある事は決して悪い事ではありません。不審者っぽい人を見たときに、パターン認識があるからこそ、私たちは自分の身を守る事ができるようになります。でも、それが全てであると思い込んでしまうのも如何なものかと思います。大切な事は自分の見える世界は、誰かによって印象付けされた世界であると分かっておくことです。くたびれたオジサン世代として、声を大にして言いたいと思います。僕は疲れて飲んだくれているわけではない!これでも楽しくやっているんだ!と。


習慣サポーター けいぞうくん
(掲載日:2021年8月20日)
(次回配信日:2021年8月27日)

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